おめでTAOございます!東京大学TAO望遠鏡完成!

「東京大学アタカマ天文台(TAO)望遠鏡」が完成したというニュースを目にしました。

2024年4月30日
速報!東京大学アタカマ天文台 (TAO) 望遠鏡サイト完成記念式典開催

TAO望遠鏡は、南米チリのアタカマ砂漠に設置された口径6.5メートルの赤外線望遠鏡です。
宇宙から地球には、私たちの目に見える光(可視光)以外にも様々な電磁波が届きます。このようないろんな波長の電磁波の観測は、可視光ではわからない宇宙の姿を解き明かしてくれます。赤外線は、星雲の中にうもれた生まれたての星の姿の観測等に役立ちます。ところが宇宙から届く赤外線の多くは地球大気中の水蒸気によって吸収されてしいます。地上での観測は容易ではありません。そのため人工衛星(宇宙望遠鏡)が活躍するのですが、どうしても多くの費用がかかり、運用にも苦労があります。TAO望遠鏡は、地球上で「地に足をつけて」観測できる天文台です。

赤外線観測するためには、晴天率が高く、乾燥した気候である場所を選ぶことがポイントになります。
そこで選ばれたのが、南米チリのアタカマ砂漠。天文学に興味のある人でしたら、ALMA望遠鏡という電波望遠鏡群を思い浮かべるでしょう。ALMA望遠鏡は、標高5000メートル級のアタカマ砂漠に置かれ、大活躍しています。
この標高の高い場所に天文台を作るのは相当大変なことです。富士山(3776メートル)よりもはるかに高い場所ですから。
こちらがその写真です。


Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)

写真は、国立天文台のALMAサイトより。南十字星など、南半球の夜空を彩る星たちが輝き、美しい星空を感じることができますね。
私もかつて皆既日食を見るために南米チリに行ったことがあります。チリは標高の低い場所でも、空気がきれいで、空の透明度がものすごかったことがとても印象的でした。チリだけにバッチリ天体観測できそうです。そこからさらに標高が高くなれば相当すごくなるだろう、ということを肌で感じました。残念ながら、私はアタカマ砂漠にはいく時間がありませんでしたが、実際に訪問した人たちの話では、アタカマ砂漠の星空は「言葉にならない」ほど凄いとのこと。(空気が薄すぎて、酸欠のため人間には過酷すぎて、かえって星がよく見えなかったという意見も聞かれましたが)
アタカマ砂漠は、地球上でもっとも宇宙に近い環境で天体観測できる場所といえるでしょう。

Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)/O. Dessibourg (国立天文台のALMAサイトより引用)

で、この写真の背後に山がありますね。

Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO) (国立天文台のALMAサイトより引用)

これがチャナントール山です。標高5640メートル!
ここならさらに宇宙に近づき、モノスゴイ観測ができるのでは?と思ったあなた。鋭いです。

ここにTAO望遠鏡が建設されたのです。思いつく人も、それを実現させた人たちも尋常でありません。
聞くところによると、作業には酸素ボンベは必須。そもそも道がないので、道路を作るところから作業が行われるなど、それはそれは大変なプロジェクトで、多くの困難があったそうです。いずれ、ファーストライト(最初の観測)が公表されると思います。楽しみに待っています。

なぜ、こんなに喜んでいるか、といいますと・・・
実はTAO望遠鏡は兵庫県内の工場で仮組が行われ、その縁で2018年1月に地元である明石市でTAO望遠鏡の講演会が開催されたのです。講演会には多くの方が集まり、夢の望遠鏡の話に聞き入っていました。そのころから完成を心待ちにしておりました。


写真)TAO望遠鏡講演会(あかし市民広場/パピオス2階)

写真)工場で仮組中のTAO望遠鏡。大きい!

TAO望遠鏡が設置される南米チリの星空では、南十字星や大マゼラン銀河、小マゼラン銀河等、明石からは見ることができない天体も観測することができます。南半球では天の川銀河の中心方向が天頂近くにくるため、天の川がさらに美しく見えます。先の記事で紹介しましたように、5月はプラネタリウムで南半球の星空を紹介していますので、館長ブログでTAO望遠鏡のニュースをピックアップしてみました。

関係の皆様、おめでTAOございます~!

 

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