新星と彗星

9月になりました。
夜には少し気温も下がり過ごしやすくなってきました。2つの興味深い天文現象の話題を紹介しましょう。

ひとつめは、天文関係者の間で、まもなく爆発的に明るくなると注目されている「かんむり座T星」です。普段は望遠鏡でないとみることができない10等星ですが、約80年に一度、2等星まで増光します。このような現象を新星(NOVA)といいます。
前回は、1946年でした。そろそろ爆発の時期が近づいています。それは今夜かもしれません。明るい期間はわずかに2-日ほどという、とてもレアな現象です。世界中の多くの天文家がこの星に注目しています。

次に紹介するのは、紫金山(ツーチンシャン)アトラス彗星です。 
彗星は氷とチリが混ざった汚れた雪玉のような天体です。太陽に近づくと、表面が崩れ、氷やガスを出し、ぼんやりとした淡い光に包まれます。時には、長い尾を引くことがあり、その姿からほうき星とも呼ばれます。
紫金山-アトラス彗星は、2023年1月9日に中国の紫金山天文台で発見、2月22日に南アフリカのATLAS望遠鏡(Asteroid Terrestrial-impact Last Alert System)で独立に検出されました。太陽系の果てにある彗星の巣とされる「オールトの雲」からやってきたと考えられ、今回初めて太陽に接近する彗星です。太陽に最も接近するのは2024年9月27日で、距離は0.391天文単位、地球に最接近するのは、2024年10月12日(0.47天文単位)です。
 紫金山アトラス彗星は発見時、かなり明るくなると期待されていました。その後の観測で、彗星が崩壊しつつあり、やがて太陽の熱にあぶられて消え去るという予想も出てきました。しかし最新の観測によればどうやら消滅することはなさそうです。ポイントは9月末に彗星が太陽に接近するときです。
9月26日早朝の彗星の写真はこちらです。

撮影日 2024年9月26日5時
機材 Seestar S50
撮影地 兵庫県加西市
撮影者 井上毅

いい具合に成長していますね。
10月の宵の西空に尾を引いた姿を観測できるでしょう。期待を込めてその時の予想位置を紹介します。


(天体観測手帳2024/早水勉さん作成の図に追記)

 観察しやすくなるのは、夕方の西空に位置する10月12日以降です。13日、14日には、宵の明星・金星と同じ高度に見えるため、金星を見印に探してみるのもいいでしょう。望遠鏡や双眼鏡などの観測道具では、ぼんやりした姿や尾が伸びた様子を観察できるでしょう。肉眼でも見えるかもしれません。ぜひ注目をしていただきたい天体です。

両方いっぺんに明るくなると、彗星の尾(テイル)が伸びている、新星NOVAを野放しにもできない、という感じでこれはもう大変!

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